簡単に言うと
「将棋界の一番長い日」とは、将棋のA級順位戦の最終局が行われる日を指します。この日は、A級に所属するトップ棋士10人が名人への挑戦とB級1組への降級を巡り、長時間熱戦を繰り広げるため、このように呼ばれています。通常3月上旬ですが、今年は、2月29日でした。
注目の的
この日は、将棋のトップ棋士たちの名誉と誇りをかけた戦いが行われ、悲喜こもごもが交錯する一日となります。対局が将棋会館で行われるときは、控室が人でごった返して、足の踏み場を探すのも難しくなるほどです。そのため、全国各地から主催紙や将棋会館に結果を尋ねる電話が多数かかるのが常だったと言われています。今は、SNSや中継サイトを通して、リアルタイムで経過・結果が分かるようになっています。また2014年(平成26年)以降、2017年(平成29年)を除き、この最終一斉対局は静岡市の浮月楼(旧・徳川慶喜公宅)で行われています。一人だけ独走状態となり、この最終局を待たずに挑戦者が決まってしまうケースや降級が決まってしまうこともあります。
名人挑戦者はA級からのみ
また、A級に在籍していないと、どれだけ実績や力があろうと名人に挑戦できないため、その地位を保つための残留争いも熾烈に行われます。これらの要素が組み合わさって、「将棋界の一番長い日」と呼ばれるようになりました。この日には、数多くのドラマが生まれ、将棋ファンにとっては非常に注目される日となっています。
6人によるプレーオフになったことも
2018年には、A級の上位から稲葉陽八段、羽生善治三冠、広瀬章人八段、佐藤康光九段、久保利明王将、豊島将之八段(段位は当時のもの)の6人が6勝4敗で並びました。この時は順位2位の羽生がプレーオフを制しました。名人挑戦者決定のプレーオフは、三人以上の勝ち数が同じになった場合、下位の棋士同士でまず対局し、勝者がさらに上位者と対局するというパラマス方式を取っています。それで、2018年のような状況では、まず久保王将と豊島八段が対局し、勝者が、佐藤康光九段と対局することになります。稲葉陽八段は、順位がこの中では一番上なので、一勝すれば名人挑戦者になれたのですが、その稲葉八段を羽生三冠が破ったという訳です。