「ピエロ」のあらまし
岡村孝子の「ピエロ」は、彼女の代表的な楽曲の一つです。1985年にリリースされたアルバム『夢の樹』に収録されています。「ピエロ」は、女性の健気な気持ちや切ない恋心を表現しており、アップテンポのメロディーと悲しい歌詞が対照的なのが特徴です。まずは聴いてみてください。
1番の歌詞
見違えるほどいい女だと 言われたくて今夜は背中の開いたドレスと 紅いルージュできたわ思わせぶりな言葉ささやき あなた誘ってみれば「今度又ね」とやさしく言われ みじめな夜更け遊びなれた女ならば私のこと愛せますか愛してます 愛してます言えはしない 私ピエロ (岡村孝子 「ピエロ」の1番)
ピエロの由来
ピエロ(Pierrot)は、一般的に道化師やクラウンとして知られるキャラクターです。ピエロは、白塗りの顔に大きな赤い鼻、カラフルな衣装を着て、観客を楽しませるために滑稽な動作や表情をすることが特徴です。もともとはフランスのコメディ・デラルテという即興劇の一部として登場しました。
ぴったりの比喩
岡村孝子も本曲の中で「道化者」と言いかえていて、好きな男の気を引くために、自分らしくない行動を取る「わたし」をピエロ(道化者)と呼んでいます。これは非常に適切な比喩です。ピエロは、観客を楽しませるために滑稽な動作や表情をする道化師であり、しばしば自分の本当の感情を隠して演じることが求められるからです。
この曲の中で、「私」は男性の気を引くために、自分らしくない行動やファッションを取り入れています。例えば、背中の開いたドレスや紅いルージュを使い、思わせぶりな言葉をささやくなど、本当の自分を隠して下手な演技をしている様子が描かれています。これはまさにピエロが観客を楽しませるために自分を演じる姿と重なります。
さらに、「私」は本当の自分を見失い、悲しみや悔しさを感じながらも、軽いジョークを飛ばして笑ってみせるなど、自分の感情を隠しています。これもまた、ピエロが自分の本当の感情を隠して演じる姿とまさに一致します。
このように、「ピエロ」という比喩は、「私」が自分を演じていることや、本当の感情を隠していることを象徴的に表現しており、非常にふさわしいと言えます。
2番の歌詞
男の好む女のタイプなんて 見出しの付いた女性雑誌のページを 穴があくほど読んでいろんな女演じてみては あなたの気をひくうち本当の自分 どこかに失くし あきれた日暮れ(岡村孝子 「ピエロ」の2番)
女性雑誌
岡村孝子は何か具体的な雑誌をイメージしていたのでしょうか。当時"an an" とか "non-no"などがありましたが、どんな内容だったのでしょうか。ちなみに両誌は今も刊行されています。この曲のリリースが、1987年なので、1986年の雑誌の内容を調べてみました。1986年1月号の、non-noには、「男の好きなヘア 嫌いなヘア」と「あなたはフラれやすい女の子?」という記事がありました。当時いやおそらく今も20代、30代女性向けによく取り上げられるテーマのようです。岡村孝子もそのような雑誌を穴があくほど読んでいたのでしょうか。
アンコールの定番曲
岡村孝子さんのこの「ピエロ」は、多くの人々に愛されており、特に多くの女性の共感を呼んでいます。悲しい失恋の歌なのに、長らくアンコールで歌われてきたというのもうなずけます。ちなみに最近のコンサートでは、歌われないこともあるようですが、「夢をあきらめないで」と並んで、人気曲であることを間違いないです。