ふきんとうだより

フォーク、藤井聡太、宮沢賢治、佐々木朗希、石川優子についてつらつら語ります

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富澤一誠 「あの素晴らしい曲をもう一度 フォークからJポップまで」 新潮新書 を読んで

富澤一誠 「あの素晴らしい曲をもう一度 フォークからJポップまで」 新潮新書 2010

著者プロフィール

富澤一誠(とみさわ いっせい、1951年4月27日 - )は、日本の音楽評論家、放送作家。長野県須坂市のご出身です。
1971年、東京大学文科三類を2か月で中退し、音楽評論家として活動を開始。『週刊朝日』『ミュージックマガジン』『ロッキング・オン』などの音楽雑誌や、テレビ・ラジオの音楽番組に寄稿。また、吉田拓郎井上陽水松任谷由実中島みゆき山下達郎など、多くのアーティストのプロデュースも手がけてこられました。
1981年には、著書『俺の井上陽水』で第10回講談社エッセイ賞を受賞。1992年には、プロデュースしたアルバム『ASIAN VOICES』で第34回日本レコード大賞企画賞を受賞。
現在は、FM NACK5の番組『富澤一誠のAge Free Music』のパーソナリティを務めるほか、雑誌やテレビ・ラジオの音楽番組でご活躍。
 

本書のあらすじ

 
富澤一誠の「あの素晴らしい曲をもう一度」は、日本のポップス史を振り返る本です。富澤は50年以上にわたって日本のポップスシーンを取材してきた音楽評論家であり、本書では、1960年代から2009年までの最も重要な曲やアーティストについて語っています。取り上げられている歌手・アーティストは、岡林信康吉田拓郎井上陽水松山千春から小室哲哉ユーミン宇多田ヒカルまで多数。
 
こんな人におすすめ
 
この本は、フォーク、J-POPファンなら必読です。日本のフォーク・ポップス史を豊富な知識と洞察力で語り、多くの知られざるエピソードも紹介されています。また、富澤の文章は読みやすく、ユーモアも満載で、読んでいるうちに日本のポップスへの愛情が伝わってきます。
たとえば「フォークの神様」という異名をとる岡林信康について、こんなエピソードを記しています。
岡林は初めて足を踏み入れたドヤで一カ月あまり寝起きし、山谷で働きました。ドヤ生活の中から自分なりにひとつの真理を見つけ出すことになるのです。「とにかく生きなおあかんよ。人間らしく。・・・」・・・この一年後、二度目の山谷行きの帰りに岡林は質流れのギターを買いました。
こんなエピソードを読んだうえで、曲を聴くといっそう味わい深いものがあります。
見どころ
 
本書の中で、富澤は日本のポップスシーンのいくつかのトレンドについて語っています。ひとつは、1960年代から1970年代にかけてフォークソングが隆盛を極めたことです。フォークソングは、若者たちの間で大きな支持を得て、社会や政治に対するメッセージを発信する手段となりました。また、1980年代にはアイドルが台頭しました。アイドルは、そのルックスと歌唱力で多くのファンを魅了し、日本のポップスシーンを席巻しました。
近年では、J-POPが世界中で人気を博しています。J-POPは、そのキャッチーなメロディーとメッセージ性の強い歌詞が評価されており、宇多田ヒカル安室奈美恵など、多くのアーティストが世界的な成功を収めています。
富澤は、日本のポップスシーンは常に変化と進化を続けてきたと語っています。しかし、その根底には、常に若者たちのエネルギーと希望が流れていると言います。この本は、日本のポップスシーンの歴史を振り返ると同時に、日本のポップスの未来を探る一冊です。
ポップスファンなら必読の「あの素晴らしい曲をもう一度」。日本のポップスシーンの歴史を知りたい人にも、日本のポップスの未来を知りたい人にも、おすすめの一冊です。
著者自身が本書を次のように要約しています。
本書は、筆者がおよそ40年にわたって間近に見つめてきたJポップの歴史を総決算としてまとめたものです。アメリカのフォーク・ミュージックがどのように日本に流入し、若者たちを虜にしたのか。それがどういうプロセスを経てニューミュージックとして花開き、今のヒットソングにつながっているのかーーー。

ふきんとうのコメント

 
フォークからニューミュージック。そしてJ-POPに至る過程を見事にたどり、要約しています。これだけ要領よくまとめられた本はないのではと思われます。巻末の名曲ガイド50は厳選された50曲で、日本のポップス名曲集と言えるでしょう。ただ、広くカバーしているだけに、特定の歌手を詳しく知りたいという人には向いていません。ガイドブック的な書籍です。