概略
「虔十公園林」は宮沢賢治が亡くなった翌年(昭和9年・1934年)に発表されました。賢治の価値観が表現されている優れた作品です。生きていたときには正しく評価されなかった虔十ですが、彼の残したものは人々の心を打ち続けるのです。賢治はまるで自分の没後、いつか自分の作品が人々の心を打つことを予感していたかのようです。
あらすじはこちらをご覧ください。
「虔十公園林」 宮沢賢治が伝えていること - ふきんとうだより
個人ノート
90年近く前の作品なので理解するのが難しい言葉がかなり出てきます。
虔十 宮沢賢治はKenjü Miyazawaという署名を残している。敬虔の虔で【慎み深い】と
言う意味があります。十は十力の十であろうと思われます。
三本鍬 刃先が三本に分かれている鍬
唐鍬 丸みを帯びた1枚の刃と柄で構成された鍬
山刀 「なた」と読んでいる朗読が多いですが、NHKのらじる文庫では「やまがたな」
と読んでいます。賢治はどちらのつもりで書いたのでしょうか。たぶん「なた」では
ないでしょうか。
九尺 30.3cm×9 約273cm
萱場 屋根を葺(ふ)くのに用いる茅(かや)を刈る所。また、秣(まぐさ)を刈る所
五寸も入っていない 15.2cm つまり、ほとんど影になっていない
チブス 高熱や発疹を伴う細菌感染症、チフスのこと。狭義では腸チフス。
鉄道 花巻に鉄道が通ったのは1890年。
十力の作用 仏教用語 仏の持つ十の力
一丈 1丈は10尺。 尺貫法で1尺=10/33 m (= 約0.303030 m = 303.030 mm)と定義さ れたので、1丈は約3.0303 m = 3030.3 mmである。
参考資料(1)
http://library.miyakyo-u.ac.jp/banner/exhibition/ex_textbook/H27kikakuten/part2.html
『60年代から掲載されていた「けんじゅう公園林」は70年代後半以降消えていった。これは、道徳的な読解を要請する教材から表現の魅力を味わう教材への変化と捉えることができるだろうか。』
コメント
参考資料(2)
宮沢賢治童話の教材史 ―文学作品と小学校「国語」教科書との関連― 牛山恵『様々な作品の教材化は、賢治童話の多様な側面に教材価値が見出さ れてきたことを意味するものだったのだが、それが平成になると「やまなし」・「雪わたり」・「注 文の多い料理店」が定番教材となってきてしまった。それは教材価値がしぼられてきている ということではないだろうか。思い切った教材の発掘あるいは教材化の研究がなされなくな っていることを意味する。』
このリポートによれば、「虔十公園林」は最近は教材として採用されていないものの、賢治作品や伝記は作品を絞って定番化しているようです。