ふきんとうだより

フォーク、藤井聡太、宮沢賢治、佐々木朗希、石川優子についてつらつら語ります

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伊藤匠新叡王 藤井聡太竜王名人をライバルとは見ていない

伊藤匠叡王誕生

2024/6/20、藤井聡太叡王に勝利して、初タイトルを獲得した伊藤匠新叡王。ともに21歳。これからも幾多の対局を重ねていくに違いありませんが、伊藤匠叡王は、藤井聡太七冠のことを、まだ「ライバルだとは思っていない」と対局後の記者会見では語っていました。一方、藤井聡太七冠の師匠、杉本真隆八段は今の心境を尋ねられ「伊藤匠新叡王に感謝したい」と述べていて、うーんとうなってしまいました。藤井聡太七冠が、さらに強くなっていくためには、伊藤匠叡王のような存在が必要だと認めているのですね。弟子の勝ち負けだけにこだわっていない広い見方と相手に対する敬意に驚きました。さて、当の伊藤匠叡王はどんなことを語ったのでしょうか。対局後の晩の記者会見では、次のように語っていました。

子供の頃からの夢

- 今の気持ちは
 
そうですね。まだ終わったばかりなので、実感が湧きませんが、タイトルは子供の頃から夢に見てきたことなので、とてもうれしく思います。
 
- 21歳の初タイトル、これまで長かったのか、短かったのか
 
プロ入りから3年ほどで、タイトル戦に出場でき、自分としては出来過ぎかなと思っていたんですけど、なかなかタイトル戦では、厳しい戦いが続いていたので、このタイミングでタイトルを獲得できたということも、幸運だったのかなと思います。
 
‐このタイトル獲得の喜びをだれに伝えたいか
 
本当にお世話になっている人がたくさんいますので、上げるときりがないですけど、やはり両親や師匠には感謝を伝えたいです。
 

棋力を上げるしかない

 
‐藤井竜王になかなか勝てない状況が続いておりました。その時の気持ち。また、こころが折れてしまってもおかしくないと思いますが、どのように闘志を保ってきたのか。そして、それが実った感想をお聞かせください。
 
藤井さんにはずっと勝てない状況が続いていて、勝てないだけでなく、内容面でも接戦にすら出来ていない将棋が多かったので、それははっきり実力の差ととらえて自分の棋力を上げていくしかないのかなと思っていました。このシリーズを振り返っても、苦しい展開が多くて、藤井さんの強さを感じるところが多かったですけど、何とか結果が出て良かったなと思っています。
 
‐今回全局角換わりとなったが
 
相掛かりは、棋士になった時から得意にしていた戦型ではあったのですが、なかなか藤井さんには結果が出なくて、また藤井さんは、先手で角換わりを得意とされていて、その対策に苦労しているところがあって、前回の棋王戦から自分も先手番で角換わりを採用してみました。
 

熱戦をお見せしたい

 
‐今後の目標は
 
現時点で具体的な目標はないんですけど、今回の叡王戦では、終盤までどちらが勝つのかわからない将棋が指せたので、このような熱戦をお見せできるように頑張りたいと思います。
 
‐藤井さんとライバルだと自信を持って言えますか
 
まったくそういう認識はないんですけど。まだまだ自分の方が実力が不足していると感じているので、これからも藤井さんとタイトル戦で戦えるように頑張りたいと思っています。
 

定跡を外して妥協しない

 
‐定跡形で戦うことへのこだわり
 
定跡形を外して力戦形で戦うという考えもあるんですけど、自分に指しこなせるかという所もありますし、変化すると若干妥協して、相手にポイントを上げられた状態で戦うことになりやすいので・・・、定跡形で戦っていると、一気に終盤になってしまうこともよくありますし、難しい所ですけど、自分にはまだやってみたい形もあり、しばらくは定跡形で戦っていきたい。
 
(ここまでが記者会見の一部)

 

今後に期待

かなり考えながら、長い間合いを置きながら質問に答えた伊藤匠叡王。将棋と同じように真摯な姿勢が伺えます。一番注目したのは、定跡を外して戦うと、妥協してしまって相手にポイントを上げられるという意識を持っているところです。この言葉からすると、定跡を外しての力戦は、あまり好みではないことがわかります。また、藤井さんが先手・角換わりを変えないので、自分も先手なら角換わりにしてみたという当たり、単に定跡形で戦うだけではなく、相手の得意形からも逃げないし、先後逆にして自分にも出来るぞというのは、語り口以上に強い意志を感じます。伊藤匠叡王の今後にかなり期待したいですね。