「星めぐりの歌」は、星座の特徴を短く切り取った幻想的な詩となっています。ただ、星座が羅列されているようにも見えますが、星座を見ながら宇宙を巡る旅に連れて行ってくれるのです。
宮沢の死後、「星めぐりの歌」は童話とともに発表され、代表作の一つとして高く評価されるようになりました。田中裕子と高倉健が出演した映画『あなたへ』では、印象的なシーンの楽曲として田中裕子が歌唱しています。
「星めぐりの歌」の歌詞の意味と魅力
あかいめだまの さそり さそり座の中心アンタレスひろげた鷲の つばさ わし座ひかりのへびの とぐろ りゅう座オリオンは高く うたひ オリオン座つゆとしもとを おとす 露と霜とを落とすさかなのくちの かたち 魚の口の形大ぐまのあしを きたに 大ぐま座の足を北に五つのばした ところ 五つ伸ばしたところ小熊のひたいの うへは こぐま座の額の上はそらのめぐりの めあて 天空の日周の中心北極星
このように歌詞は短いですが、星座の見た目を純粋に描写しながら、天空を旅していく感覚になります。天文学的には、正確ではない部分もあるようですが、最後に天空の日周運動の中心である北極星にたどり着きます。「銀河鉄道の夜」を歌にしたかのようです。
「星めぐりの歌」が注目されるようになったいきさつ
賢治は「星めぐりの歌」を家族の前や学校でよく口ずさんでいたようです。彼の死後、弟の宮沢静六の記憶をもとに、賢治の友人の藤原嘉藤治が採譜しました。問題は、その後この歌が知られるようになったいきさつです。いろいろ調べてみましたが、これといった資料が見つかりませんでした。でも、2012年に映画「あなたへ」の中で、田中裕子が歌っていますし、2020年の東京オリンピックの閉会式では、大竹しのぶが歌っています。ボクとしては、田中裕子が歌いあげている場面がとても印象に残っています。
宮沢賢治の純粋な歌