ふきんとうだより

ふきのとう、フォーク、宮沢賢治、石川優子についてつらつら語ります

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佐藤天彦九段の振り飛車愛が止まらない

振り飛車をよく指すようになってから好成績が続いている「貴族」こと佐藤天彦九段。直近10局では、8勝2敗。特にA級順位戦で4連勝していますが、その4勝はすべて振り飛車というのですから、「振り飛車党」と言っていいでしょう。

佐藤天彦九段の振り飛車愛に満ちた例え

11/9に「将棋の日in渋谷」というイベントがあったのですが、その時の佐藤天彦九段の話が振り飛車愛に満ちた例えだったので、ご紹介いたします。
佐藤天彦九段の例えでは居飛車は仕事みたいなもの。そして、振り飛車は恋愛。この振り分けからして、佐藤天彦九段の振り飛車愛が明らかですね。

居飛車

居飛車党の棋士は、2つの大きな課題に取り組まなければいけません:
①相居飛車(お互いが居飛車の戦い)の研究
振り飛車に対する対策
つまり、「仕事を一生懸命やりながら、恋愛もこなさなければいけない人」のような状態。こりゃ大変でしょ。

振り飛車党(=恋愛専念派)

振り飛車党の棋士は、基本的に相手は居飛車でくるので、居飛車対策だけを考えれば良い
つまり「一つのことだけに集中できる」という意味で「恋愛に専念できる人」に例えているのです。
天彦九段の例えは、将棋の戦法の特徴を日常生活に置き換えた秀逸な比喩で、渡辺明九段が爆笑したのも納得です。居飛車党は「仕事も恋愛も」という現代人の多忙な生活を、振り飛車党は「恋愛に専念できる」というある意味理想的な状態を表現しているわけです。

相振りはどうなる

ただ、ここに一つの問題が生じます。相振り飛車という、恋愛と恋愛がぶつかり合う可能性もあるということです。おそらく佐藤天彦九段は、相手が振り飛車なら自分は居飛車で行くというのが、基本スタンスなんだろうと思います。大山康晴名人などもそうでしたね。そもそも、高段者ならどちらも指しこなせるわけですから。佐藤天彦九段は、どちらの戦法も自在に使いこなせるため、戦略を柔軟に切り替えることができます。この柔軟さこそが、彼の将棋の強さの根源でもあります。

渡辺明九段との対談

天彦九段の秀逸な例えは、渡辺明九段とのトークショーの中で語られたのですが、他にも結構面白い話が、ありまして、こんな感じです・・・(要約です)
明) 最近あんまり話してないよね。対局場では見かけるけど、天彦さんは結構しっかり寝てるからね。たまには会おうよ。
20代の台頭がすごいよね。36の天彦さんでもつつかれてる。非公式だけどレーティングが体感としては、今の力を正確に表してるよね。
40になると、トップ棋士でいられるのも、あと何年かなと思うから、それがまたモチベーションになるんだけど、そんなこともあって、天彦さんも振り飛車始めたんだよね。
天) ボロボロになっても指し続けるしかないから、最前線に付いていくというのをどこかでやめなきゃいけない。
明) 僕もね、全然付いていけてない。振り飛車に移って一年くらい?
天) そうですね。居飛車の定跡だいぶ忘れましたよ。
明) よく居飛車振り飛車のちがいを例えで説明しようとするんだけど、うまくいかない。プロだから両方指せるという訳じゃないじゃん。
天) 考え方はだいぶ違うよね。これ完全に冗談なんだけど、居飛車が仕事、振り飛車が恋愛みたいな。
明) どういうことすか。それ。(笑)
・・・こんな流れでご紹介した例えが出てきたわけです。あとこんな考察も・・・
天) 振り飛車って文学的って言うか、自分の感性で好きなものを決められる。居飛車の研究って、みんな寄ってたかって同じところを研究しているから、何か科学みたいだね。
明) ファンの人に、天彦先生は何で振り飛車に転向できたんですかって訊かれるんだけど、「センスがちがうんだよ」として答えられない。(笑)・・・
この後、永瀬九段のどこがすごいのかが語られたのですが、価値観のちがいを渡辺明九段が力説していたのが印象的です。(お二人のトークショーは、YouTube公開動画の、4時間30分くらいから始まります)

振り飛車で勝ち続ける佐藤天彦九段への期待

振り飛車で華麗に勝ち星を重ねる佐藤天彦九段の姿は、振り飛車党としての可能性をさらに広げています。彼の活躍が振り飛車戦法に対する新たな見方を生み、振り飛車党のファン層を増やすことが期待されます。これからも佐藤九段の独創的で華やかな将棋に注目し、さらなる飛躍を応援していきましょう。そして、名人戦の舞台へ再び。

放送予定

この日のプログラムは、NHK Eテレにて12/29(日)10:30-12:00に放映予定です。

うれしいことに、YouTubeでも公開中です。


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