ふきんとうだより

フォーク、藤井聡太、宮沢賢治、佐々木朗希、石川優子についてつらつら語ります

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松山千春 「足寄より」 北海道に生きるフォークシンガーの誕生

松山千春 「足寄より」 を読んで

松山千春の「足寄より」は、1979年に出版された自伝。松山千春が北海道の足寄町で生まれ育ち、歌手になるまでの23年間を綴った作品です。
 

著者・松山千春のプロフィール

昭和30年(1955)12月26日生まれ。現在67歳。北海道足寄郡足寄町に生まれます。
1975年、『'75全国フォーク音楽祭』北海道大会への出場をきっかけに、1977年1月に「旅立ち」でデビュー。以後、「恋」「季節の中で」「長い夜」「君を忘れない」「大空と大地の中で」など数々のヒット曲を生み出します。2023年現在もコンサートを続けています。松山千春は自分のことを「フォークシンガー」と呼んでおり、歌謡曲とは一線を画しています。力強くて突き抜けるような歌声が特徴。
 

あらまし

本書は、松山千春の幼少期から始まり、小中高と成長していく過程、フォークシンガーとしての活動の開始、そして恩師・竹田さんと二人三脚でデビューするまでの道のりを描いています。松山千春の素顔や、歌に対する思いが赤裸々に語られており、ファン必読の一冊です。
本書の中で、松山千春は、自分の歌は「足寄町から生まれた歌」だと語っています。足寄町は、人口約1万人の北海道の町です。松山千春は、この町で生まれ育ち、自然や人々に囲まれて、自由に育ちました。この環境が、松山千春の歌の原点となっています。
松山千春の歌は、人間の心の奥底にあるものを描いた歌が多いです。それは、彼が足寄町で、自然や人々に触れ、自分の心と向き合ってきたからこそ、書ける歌なのではないでしょうか。
足寄より」は、松山千春の半生を綴っただけでなく、人間の心の奥底を描いた、普遍的なメッセージが込められた作品です。松山千春のファンの方はもちろん、そうでない方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
 

見どころ

誕生 
千春は早産で生まれたため、小さい時は病弱でした。松山家の経済状態も思わしくなく、千春の出産時の費用を長い間月賦で支払っていました。そんな状況を子どもながらに見ていて「生まれて来てごめん」って思っていたらしい。歌手になってからの強気な発言からは想像できない幼少期だったようです。そのあたりの記述を読むと、千春は貧しくても親の愛を受けて育ったんだなあということがよくわかります。
 
足寄西小学校時代
五年生の時に岡林信康を初めて聴きます。友だちの良生君から聴かされて、とりこになります。そして、六年生の時に、その岡林信康が足寄に来るのです。その時の様子は、そのまま引用します。
『六年の秋口だったかな。岡林信康さんが足寄にくるんだよ。労音のコンサートで。公民館で三百人くらい入ったかな。どんなもんかと思って、ひとりで行ってみた。
 
バックはなくて、岡林さんひとりでやっていた。ガツーンの大ショック。すごいと思った。・・・
 
安保にしても安田講堂にしても、あっちのことだと思っていたのね。だが、岡林さんの歌はそれを明解にして、身近に引き寄せてくれる。メッセージが伝わってくる。岡林さんの歌とギターのなかから、俺はグングン目ざめて、世の中が見えてくる。そんな感じ。
 
やってみようと思った。俺も歌ってみよう、と』
この時、フォークを歌ってみようと千春は心に決めたようですね。この後、バスケに集中する時期もあり、フォーク一筋にはまだなりませんが、この時の岡林信康から受けた衝撃とプロテストの意識が、千春の中に今も息づいていることは間違いありません。
 
つづく