一年間まかせてくれ
二回目のフォーク音楽祭。全道大会に進んだ千春。態度が悪いのが災いして全国大会には進めませんでした。しかし、審査員の一人、竹田健二さん(STV 札幌テレビ)は千春の原石のような素質を認めていました。他の審査員たちに「一年間、とにかく俺にまかせてくれ」と語って、千春を育てることにしたのです。別れ際に竹田さんが千春に「松山、ひょっとしたらラジオで使うかもしれない。そうなったら、出て来れるか」と言い、千春は「出てきますよ」と答えます。でも千春は、期待していなかった、と「足寄より」に書いています。
夜明け前
夜明け前が一番濃い暗闇に包まれると言います。千春にとっては全道大会から次に竹田さんから呼ばれるまでの時期が夜明け前と言えるでしょう。千春は足寄に戻って、父親の新聞の集金を手伝い始めます。午前10時から午後4時まで集金。それが終わるとパチンコに行くという日々。そんな中でも曲を作っています。『風車』を作ったくだりを「足寄より」から見てみましょう。
でも、欲求不満はあったね。歌えないってことがね。
歌う場がない。これは煮詰まる。で、そんなときは曲を作るんだ。「風車(かざぐるま)」はそのころできた曲。恋愛を材料にはしているけどね。まわれまわれって、欲求不満を吹っ飛ばそうとしたのが、モチーフになっている。めいっぱい声はりあげてね。
夜明け前にいい曲を作ってましたね。負の感情が強い時でも、それをバネにして力強い曲を作る。人生に通ずる大事なことですね。負の感情を前に進むエネルギーにする感じでしょうか。そういえば、千春には『夜明け』という曲もあります。
夜明けが訪れる
風車のようにまわりながらもがいていた千春のもとに、ある日突然竹田さんから電話がきました。
「新しいラジオの番組やるから、おまえのコーナーもたないか」と。フォークシンガー・千春に夜明けが訪れたのです。