北海道紋別市で指された第82期名人戦七番勝負の第5局は、藤井聡太名人が挑戦者の豊島将之九段を降し、対戦成績4勝1敗で初防衛を果たしました。タイトル戦は負けなしの22連覇で、自身が持つ最長記録を更新し、全8冠を堅持しました。 pic.twitter.com/kD5nu9I1gQ
— 毎日新聞・将棋 (@mainichi_shogi) May 27, 2024
今回の注目は、挑戦者の豊島将之九段が、藤井聡太名人に対して初めて振り飛車を採用したことでしょう。最近、振り飛車を指すことがある豊島九段ですが、藤井聡太名人に対してはこれまで飛車を振ったことがありませんでした。残念ながら、今回は敗れましたが、これからもぜひ振ってほしいものです。
居飛車四枚穴熊対四間飛車
端歩を早めに突いて相手の対応を見たのは、後手の豊島将之九段。先手の藤井聡太名人が手を抜いたため、豊島九段は端歩を突き越し、四間飛車~美濃囲いと進めます。一方の藤井聡太名人は、端歩を受けなかったので、穴熊に囲っていきます。しかも、金銀四枚総動員の穴熊となりました。相居飛車・角換わりなどでは囲いよりも、攻めを重視する藤井名人ですが、振り飛車に対しては穴熊に囲うことが多い印象です。
構想勝ち
ガチガチの穴熊は攻撃力に劣るのですが、2筋の攻防で馬を作った名人の構想が勝っていました。早い段階で、角と飛車を交換して馬を作ったこと。穴熊の固さゆえに、相手に飛車を渡してもそう簡単には自陣は崩せないだろうという藤井名人の見極めが正確でした。
藤井穴熊対策
今回、四間飛車で敗れた豊島将之九段。今後も振り飛車を指していくかどうか明言しませんでした。菅井竜也八段も、振り飛車のスペシャリストですが、なかなか藤井名人に対しては苦しそうです。私の印象では、藤井名人の居飛車穴熊がかなり強力なので、その対策をしつつ、ぜひ豊島将之九段には、これからも振り飛車を指してほしいなと思っております。
永世名人への道
藤井聡太名人は、名人位を防衛し2期となりました。通算5期になると、「永世名人」となります。現代では、木村義雄・大山康晴・中原誠・谷川浩司・森内俊之・羽生善治が永世名人となっており、藤井聡太名人が永世名人になると20世名人となります。なぜ20世なのかというと、江戸時代の初代大橋宗桂名人から数えているからです。