ふきんとうだより

フォーク、藤井聡太、宮沢賢治、佐々木朗希、石川優子についてつらつら語ります

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六角精児 伊集院静の思い出を語る

六角精児・今日の一曲は伊集院静作詞の『ギンギラギンにさりげなく』

12/14のNHK-R1「ふんわり」で六角精児さんが、近藤真彦の『ギンギラギンにさりげなく』を冒頭にかけたんです。澤田彩香アナは、六角さんらしからぬ選曲と感じたようですが、かける前にその理由を説明していました。そのあたりが興味深いので、少し文字起こしでまとめてみました。

この曲を選んだのはですね。作詞は伊達歩さんという方なんですけれども、作家の伊集院静さんのペンネームです。これはペンネームのペンネームになるのかな?この伊集院さんっていう方について、ちょっとお話をしたかったものですから。そんなに何度もお会いしたというわけではないんですけど、ある週刊誌で一緒に連載をしてたことがありまして。僕が書いたものがまとめられて、本になる時があったんです。その時、巻末に載せる対談があったんですけど、伊集院先生とその時に対談をしたことがありました。ギャンブルだとかですね。人生のことについて非常に印象深いお言葉をいただきました。その後、麻雀をしようという会があったりして、伊集院先生は来なかったんですけども、僕がやってると、その出版社の方に連絡して「六角さんは楽しんでるか」っていうんですよ。豪快であり、素敵な気遣いをなされる方だったんですよね。

 

六角精児へのエール「金もねえのに」

何年か前に、伊集院先生がずっと泊まっていらっしゃるホテルが御茶ノ水にあるんですけど、そこで打ち合わせがあったんですよ。まずそこにある天ぷら屋さんで天ぷらを食べた後、バーで打ち合わせをしてたら、上下股引姿でホテルの人に文句を言ってる人間がいたんですね。誰かなとよく見てみたら、伊集院先生だったんですよ。伊集院先生だなと思って見てたら、向こうが僕のことを見つけて、「あんた今、こんなとこで何やってんだ?」って言うから、

「いや、僕はあそこでご飯を食べて、今ここでまた打ち合わせしてるんです」

「あんなとこでお前、ご飯食べたのか? ええ、金もねえのによう。金ねえのに、あんなとこでお前」って言うんですよ。

でも、「僕、これごちそうになったんで、金があるなし関係ないんですって」

「いやいや、だけど、お前金もねえのに」って何度も何度も「金もねえのに」っていうんです。その「金もねえのに」って言う言葉。本来ならいい言葉じゃないじゃないですか。それがすごく優しく、温かく聞こえる「金もねえのに」だったんですよ。で、もう伊集院先生亡くなっちゃったじゃないですか。それで僕は今、あの方が僕に言った「金もねえのに」って言葉を自分にとってのエールだと思ってるんです。おそらく伊集院さんにとってお金なんてどうでもよかったんですよ。だからその「金もねえのに」っていうことはお金がないのに好きなことをやってる自分に対してのほめ言葉なのかもしれないし、僕に対してのエールかもしれない。

 

伊集院静の「ギャンブルっていうのは」

すごく魅力のある方でギャンブルのことについても教えていただいて、「お前のやってるギャンブル。ギャンブルじゃねぇよ」って言われたことがあるんですよ。「ギャンブルっていうのは、やっぱり自分の持ってるものを9割かけないとギャンブルとは言えない」って言われたんですよ。やっぱり結構すごい言葉なんですけど。そういうことを豪快に、そして繊細に、そして素敵に言える方だったんですね。

 

伊集院静さんのプロフィール

伊集院静(いじゅういん しずか)は、日本の作家、作詞家。1950年2月9日に山口県防府市で生まれました。立教大学文学部日本文学科を卒業し、1970年代から2023年まで小説、随筆、作詞などの分野で活躍しました。代表作に『乳房』(1990年)、『受け月』(1992年)、『機関車先生』(1994年)、『ごろごろ』(2001年)、『ノボさん 小説 正岡子規夏目漱石』(2013年)があります。

伊集院静は、夏目雅子さんと1984年に再婚しましたが、夏目雅子さんは1985年に急逝されました。1992年には、篠ひろ子さんと再々婚しました。篠ひろ子さんは女優であり、伊集院静さんとの間には一人の娘がいます。

伊集院静は、自身の作品において、人間の内面を描写することに力を注いでいます。また、彼の作品は、社会問題や人間関係など、現代社会に生きる人々の心情を描いたものが多く、多くの読者に愛されています。2023年11月24日73歳で死去。

 

本当に心配で気遣っていた

わたくしふきんとうがこの話を聴いて思ったのは、伊集院静さんは、六角さんを見ていて、本当に危なっかしく感じたのではないかということ。だから本当に心配で、「金をねえのに、こんな高い店で散財して」と気遣っていたのでしょう。散財している訳ではなく、出版社持ちの食事だとわかっても、こんな機会にしっかり食べとけよ、というような反応ではなく、「金もねえのに」を繰り返した伊集院さん。確かに心配しながらエールを送っていたのかもしれませんね。