ふきんとうだより

フォーク、藤井聡太、宮沢賢治、佐々木朗希、石川優子についてつらつら語ります

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『宮澤賢治 百年の謎解き』 澤口たまみ を読んで

宮澤賢治 百年の謎解き』のあらまし

宮澤賢治 百年の謎解き』(2022年8月刊行)は、澤口たまみさんが著した、宮澤賢治の恋愛についてのエッセイ・研究書です。 宮澤賢治は、生涯独身でしたが、実は大畠ヤスさんという女性と一時期相思相愛だったことがわかっています。この本では、『春と修羅』をはじめとする詩の数々に封じこめられた切実な恋心を読み解きながら、賢治の思いと恋愛の流れを明らかにしています。 約百年の時を越えて開封する、胸がしめつけられるほど切なく美しい愛の物語です。賢治の数多くの作品から引用して、筆者の推測と根拠が述べられており、単なるエッセイではなく、立派な研究書ともなっています。本書は『宮澤賢治 愛のうた』(2010)を加筆修正したものです。

 

著者プロフィール

澤口たまみさんは、エッセイスト、絵本作家です。 1960年岩手県盛岡市生まれ。岩手大学農学部卒業。自然をテーマにした文章を書いたり、児童を対象にした自然観察会を開くようになり、1990年に『虫のつぶやき聞こえたよ』で日本エッセイストクラブ賞を受賞しました。 代表作には、『虫のつぶやき聞こえたよ』、『岩手の野草百科』、『それぞれの賢治』などがあります。賢治と同郷で、しかも同じ学校で学んでいるためか、賢治作品に対する従来のアプローチよりきめ細かい考察が随所に見られます。
 

この本のねらい

本書のプロローグで澤口たまみさんは、はっきりとこう記しています。
「わたしが本書でしようとしているのは、『春と修羅』に封じ込められた賢治のラブ・ストーリーを再び取り出し、皆さんに伝える試みです。」
生前刊行された賢治の唯一の詩集『春と修羅』。その内容や下書き、そして死の直前に記した文語詩、賢治とその周辺をよく知る人たちの証言をもとに、賢治が伝えたかったことを解き明かしていきます。
 

この本を通して著者が伝えたいこと

賢治は大畠ヤスのことを作中に数多く織り込んでいる

賢治は「永訣の朝」で妹のトシに対する深い愛情と惜別の情を表現していますが、それに続く「松の針」の中で、こう記しています。
「おまへがあんなにねつに燃され
 あせやいたみでもだえてゐるとき
 わたくしは日のてるところでたのしくはたらいたり
 ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた」
この詩の「ほかのひと」とはだれなのでしょうか。結論から言えば、大畠ヤスなのですが、少なくとも妹に対する愛情とは異なる深い愛情を感じている人がいたことは確かです。

賢治は大畠ヤスとの結婚を強く望んでいた

 

賢治の作品の意図を読み取りたいなら大畠ヤスを無視してはいけない

 

賢治について僕の思うこと