ふきんとうだより

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一本のバラで日常を彩る!新しい楽しみ方

「バラはお高くてなかなか束では買えないのよね」。ラジオ番組に寄せられた、あるリスナーさんのこんな一言に、思わず頷いた方も多いのではないでしょうか。「バラ」と聞くと、特別な記念日の豪華な花束を思い浮かべ、少しだけ敷居が高いと感じてしまうかもしれませんね。

しかし、今バラの世界では、そんな常識が変わりつつあることをご存知でしょうか。実は現在のトレンドは、「一本でも主役になる、個性的なバラ」なのです。この記事を読めば、あなたのバラの選び方、そして楽しみ方が、きっと変わるはずですよ。

今回は、花のプロが語る最新のトレンドから、思わず見惚れてしまう注目の品種、そして日常を豊かにする簡単なアレンジのコツまで、NHKラジオ「マイあさ!」で語られた内容をもとにバラの新しい魅力をご紹介いたします。

1. トレンドは「花束」より「一本の存在感」

今の人気は、一本でじっくり楽しむスタイルへ

愛知名港地方卸売市場の専門家、浅野光寿さんは、現在のバラの人気について次のように語っています。

「小ぶりなものより大ぶりで、一本で楽しめる存在感のあるものが人気ですね。」

かつてのようにたくさんの花を束ねてボリュームを出すのではなく、今はまるでアートを飾るように、たった一本のバラが持つ個性や美しさをじっくりと愛でるスタイルが支持されています。これは、私たちの価値観が「量」から「質」へとシフトし、一つのものを大切に、深く楽しむライフスタイルを求めるようになったことの表れかもしれませんね。SNSで一枚の写真として「映える」ことも重視される現代において、多くの花を集めた豪華さよりも、一枚の絵画のように完成された、個性的な一輪の美しさが求められるようになったとも言えるでしょう。

また、浅野さんによると「夏から秋に向けて薄い色から濃い色に人気が高まります」とのこと。季節の移ろいとともに、好まれる色合いが変わっていくのも、バラの奥深い魅力の一つですね。

2. 人気のキーワードは「クシュクシュっとした」ロゼット咲き

花びらが幾重にも重なる、複雑で優美な姿

では、具体的にどのようなバラが人気なのでしょうか。そのキーワードは「ロゼット咲き」です。中心部分が「クシュクシュっとした形」に見える、花びらの枚数が非常に多い咲き方を指します。幾重にも重なった花びらが作り出す複雑で豪華な表情は、一本だけでも圧倒的な存在感を放ちますよ。

ここでは、その代表的な品種を2つご紹介します。

  • セントジェームスパーク
    昨年登場した新品種です。コロンとした赤い蕾が開くにつれて、徐々に色が薄くなり、最後には透明感のある美しいピンクワイン色へと変化します。一つの花で色の移ろいを楽しめるのが大きな魅力ですね。
  • ノッティングヒル
    こちらも昨年の新品種です。外側の花びらはしっかりとしたピンク色ですが、中心に進むにつれて柔らかな オレンジ色になる、上品で可愛らしい色の組み合わせが特徴です。その優美な姿は、見る人の心を捉えて離さない、繊細な魅力があります。

3. 次の主役は「緑がかったピンク」の新星

今年登場、ブレイク間違いなしの注目株「エスカラス」

今年登場したばかりで、プロが次にブレイクすると予測しているのが「エスカラス」という品種です。

その特徴は、「花びらが多くて透明感がある、緑がかったピンク色」です。市場では、同じように緑がかったピンク色のアジサイトルコギキョウが既に高い人気を誇っており、この絶妙なニュアンスカラーが多くの人に愛される素地は十分にあります。

また、自然なグリーンを含むピンク色は、他のどんな花とも調和しやすく、アレンジメントにも取り入れやすいという実用性の高さも兼ね備えています。まだ流通量は少ないですが、これから花屋の店頭で見かけることが増えるであろう、注目の新品種ですよ。

4. いつものバラが特別な飾りに:プロが教える「お月見アレンジ」

たった3本で完成。風情を楽しむ秋のしつらえ

個性的な一本のバラを手に入れたら、少しだけ工夫して飾ってみませんか。浅野さんが提案するのは、中秋の名月にちなんだ、風情あふれる「お月見アレンジ」です。

材料

  • 黄色いコロンとしたバラ:1本(月に見立てます)
  • スモークグラス:2本(ススキに見立てます)

道具

  • 高さ20cmほどの花瓶

活け方のポイント
高さ20cmほどの花瓶を用意し、それに対してスモークグラスを約60cm、バラを約40cmの長さにカットすると、美しいバランスが生まれます。スモークグラスを高く、バラを低めに活けるのが美しく見せるコツですよ。

お月見アレンジ (イメージ)

「柔らかい風に当たるところに置くとスモークグラスの方が揺れて雰囲気が出ますよ」と浅野さんは語っています。風にそよぐススキに見立てたスモークグラスの穂先から、月のような黄色いバラが見え隠れする。そんな奥ゆかしい日本の美意識を感じさせるアレンジです。たった3本で、秋の夜長に静かな思索を誘う、詩的な空間が生まれますよ。

まとめ:一本のバラに、新しい物語を

豪華な花束も素敵ですが、今のバラの楽しみ方は、もっとパーソナルで、もっと自由なものへと変化しています。たくさんの花を飾るのではなく、たった一本のバラが持つ形、色、そして咲き方にじっくりと目を向け、その個性を愛でる。それは、「量」よりも「質」を大切にする、現代の価値観とも響き合いますね。

情報やモノが溢れる現代だからこそ、私たちは一つのものにじっくりと向き合い、その背景にある物語や美しさを深く味わうことに、より大きな豊かさを見出すようになっています。一本のバラを選ぶという行為は、まさにそうした価値観を象徴する、ささやかで美しい自己表現なのです。

次にあなたが花屋で一本のバラを手に取るとき、その花びらの形や色の奥に、どんな物語を見つけますか?きっとそれは、あなたの日常を少しだけ特別にしてくれる、新しい発見に満ちているはずですよ。