ふきんとうだより

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半沢直樹シリーズ (5) アルルカンと道化師 あらすじと魅力

 

 

【1. 序論】

池井戸潤による半沢直樹シリーズは、その迫力ある展開と人間ドラマで多くの読者を虜にしてきた。
第1作『オレたちバブル入行組』 
第2作『オレたち花のバブル組』 
第3作『ロスジェネの逆襲』
第4作『銀翼のイカロス』 
ここまでのあらすじは、こちらをご覧ください。

 

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第5作「アルルカンと道化師」は、第1作の西大阪支店の債権回収より前に生じたエピソードで、半沢直樹が銀行員として中小企業を支えていく中で、得体のしれない買収案件が持ちあがってくる。
 

【2. あらすじ】

東京中央銀行大阪西支店融資課長を務める半沢直樹。大手IT企業・ジャッカルが業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいという話が持ち上がる。大阪営業本部は、銀行の方針を盾に強引な買収工作を進める。あくまで企業の意思を尊重する半沢は、彼らに抵抗するが、融資の稟議を通すための必死の行動の末、背後に潜む秘密の存在に気づく。有名な画家・仁科穣がかいた絵・アルルカンと道化師(ピエロ)に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどり着いた驚愕の真実は・・・。
 

【3. 魅力ポイント】

ミステリーを楽しむ

池井戸潤はこの作品をミステリーとして書いたと述べており、読者は半沢と共に謎解きに挑む楽しさを味わえる。絵画に隠された秘密は、単なるアートの話題から一転して、銀行の大きな問題に発展していく。

原点回帰

アルルカンと道化師」では、シリーズの原点である銀行員としての使命に立ち返る。半沢直樹の闘志が再び燃え上がり、規模が小さくとも深い人間ドラマが描かれている。

キャラクターの深み

半沢直樹はもちろんのこと、周囲のキャラクターたちも一層深みを増している。彼らが抱える問題や取り組みは、読者に現実的な共感と希望を呼び起こす。
仙波友之 仙波工藝社社長
経営危機に陥った自社を半沢と共に立て直していく過程で大きな変化を遂げていく。
堂島政子 友之の伯母 
彼女は資産家だが、訪問してきた半沢や友之に厳しい態度を取る。しかし、あきらめずに彼女の心を開くために半沢が苦心する。
渡真利忍 同期入行の親友
テレビでは、及川光博が演じており、半沢の貴重な情報源。回を追うごとに影が薄くなる印象だが、どうして半沢の情報源として糾弾されないのかは、このシリーズの謎の一つだ。著者である池井戸潤は、この渡真利を中心に据えた作品も構想していたようだが、さらに将来のことになりそうだ。
この新作「アルルカンと道化師」は、半沢直樹シリーズの新たな側面を探求しつつも、原点回帰が主なテーマであり、半沢直樹の出世物語ではない。それゆえに既存のファンの評価は二分されるかもしれない。僕は、プロットの意外性やミステリーとしても良質な楽しみ方が出来ることを高く評価したい。