ふきんとうだより

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佐藤天彦九段の不服申し立ての裁定

将棋

佐藤天彦九段の不服申し立ては却下

2023/1/12、日本将棋連盟は、佐藤天彦九段の不服申し立てを採用しないと
裁定しました。
佐藤九段は、今後の対応を明らかにしていませんが、
「満足のいく内容ではなかった。整合性が取れていない印象だ」
とコメントしています。
今回は、これまでの経緯を振り返りつつ、連盟の裁定をまとめてみました。
当サイトは、どちらかを支持する立場にありません。基本的に中立です。

裁定が下される

事件勃発

2022/10/28、佐藤天彦九段は、A級順位戦(相手は永瀬拓矢王座)にて、マスク不使用を理由に反則負けとなってしまいました。詳しい内容は以前に記事にまとめてあります。

 

fukinto.com

赤いバラはどうなった

 

佐藤天彦九段は、赤いバラを家に持ち帰って、最後まで愛でたのですね。
贈られた「ふかえり」さんも号泣されました。
天彦九段にとって反則負けは、棋士としてかなり大きな損失です。
でも、人としては何か得難いものを体感されたのではないでしょうか。
実際、多くの人は、ふかえりさんのような具体的な行動は取らなかったでしょうが、
数多くの有言無言の声援が天彦九段に送られたわけですから。
 

今回の裁定の要旨

日本将棋連盟は、2.結論でこう述べています。
【「本判定」は当連盟の臨時規定及び対局規定に即した妥当な判断であった。したがって、「本件不服申立」における、反則負け判定の取り消し、並びに、対局のやり直しの主張については、いずれも採用できない。　
なお、既存の規定や運用方法については、今後改善に向けて継続的な議論を行っていく。】
 
全文はこちら
 
基本的には、反則負けという最初の判定は覆らなかったということですね。
臨時規定や運用については、改善に向けて継続的な議論を行っていく、
ということなので、これもすぐには変更されない見込みです。
ご存じのように、この対局以外でも、マスク不使用による反則負けが
最近発生しています。
 
 

連盟裁定の根拠

佐藤天彦九段の不服申し立てが採用されなかったのはなぜでしょうか?

日本将棋連盟による理由の要旨は以下の通りです。
佐藤天彦九段が約1時間マスク不着用であったことは事実であり、適用除外となる「食事をしているとき」「飲み物を飲むとき」「周りに人がいない（２ｍ以上離れている）とき」等にも明らかに該当していない。そして、これは周知説明されてきた。
 
故意ではなかったとの申し立てについては、他の反則行為も過失を対象としている。マスク不着用についてのみ故意だから除外するというのは不適当。なお、臨時規定の趣旨は「新型コロナウイルスの感染拡大防止の徹底」のためであり、社会通念上も過失事案に妥当するもの。
相当性を欠く(つまり厳しすぎる)との主張については、マスク不着用の反則は懲戒権行使ではなく現行の将棋対局ルールである。また、対局規定8条では、マスク不着用の反則についても、他の反則行為と同様に反則行為の発生時は「即反則負け」とされている以上、マスク不着用の反則についてのみ、注意・警告が反則負けの要件になるとの解釈を採用することは困難。
 
佐藤天彦九段の不服申し立てのそれぞれの根拠に対して、丁寧に考慮、決定された印象です。
ルールに則っての、妥当な判定であったため、覆す必要はないとしています。同時に、順位戦の反則負けは、懲戒ほどの重い処分とは言えないという見方です。
 

佐藤天彦九段は納得せず

 
天彦九段は「整合性が取れていない印象だ」とコメントしており、当然ながら納得していません。どのあたりをそう感じたのでしょうか?
 
毎日新聞はこう報じています。
【佐藤九段は毎日新聞の取材に「残念ながら満足のいく内容ではなかった。本件以降、立会人がマスク着用を複数回促す運用に変わっており、整合性が取れていない印象だ」と話した。佐藤九段によると、問題が起きる前、常務理事が棋士に、臨時規定を設けても「直ちに反則負けにはしない」と説明したほか、マスクを着用するよう注意を受けた棋士もいると耳にしたという。佐藤九段はこれらの事実関係の調査を求めたが「何ら触れていないことも残念」とし、今後の対応を検討するという。】
から引用　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
佐藤九段としては、本件以降、立会人がマスク着用を促すようになっていること、本件より前には、直ちに反則負けにはしないしないという説明があったことなどが引っ掛かっているようです。そして、その点の調査を求めたものの「何ら触れられていない」ことも納得できない要因でしょう。
 

今後の対応は

佐藤天彦九段は「今後の対応を検討する」と語っています。これは個人的な推測ですが、佐藤天彦九段は、これ以上この件を引きずらないような気がします。A級に踏みとどまることに注意を集中するのではないでしょうか。