2023/2/11にNHK-R1で放送された「グレープ ありがとうラジオ」から
今回はその4回目です。二人のハモリはどう進化したのか、
二人がどんなプロセスで曲を共同で作ったのか、が楽しく語られます。
進化したハーモニー
「うたづくり」と「夢の名前」が流されました。
二人のハーモニーが優しく溶け合っている、静かで優しくなれる曲です。
ハモリの話が続きます。
さだ わりとちゃんとハモってるよね。今回はね。
吉田 レーズンの時以上にまあ、お互い年のせいもあるんだろうけど、なんかこうなじみ方、声が何というかワインを寝かしたみたいだね。
さだ そうだったらうれしいよね。
江崎 私だけの感じかも知れないのですが、ハモリの部分を聴かせていただいて、「殺風景」を知っている私としても、あのこういう言い方は失礼かもしれませんが、聴いてて気持ちよかったです。
さだ すごいでしょう。進化してるでしょ。
江崎 あのころと比べると、何か新たに発見した部分っていうのがありましたか、吉田さん。
吉田 今でもね。会うと殺風景やってるからね。長生きしてるよね。あの子(殺風景という曲のこと)は。
さだ でも、殺風景はだいぶハモルようになったね。グレープ時代はね、本当に、声が違うんで。ちゃんとハモってるんですよ。音はハモってるんですけど、なじまないんです。声がね。
吉田 だからレコーディング中に、ソロボタンというのがあるんですよ。あの押したチャンネルだけが聴こえるっていうやつ。まずじゃあ、まさしのちょっとテイク聴いてみようって。合ってるよな。じゃあ、ちょっと吉田の聴いてみよう。合ってるよなあ。両方聞いてみようよ。なじまないよね、っていうのが多かったんですけど、今回は。良かったよ。
【素人はそれぞれの音程が合っていれば、それでちゃんとハモッているね、ということになっちゃうのですが、プロとしては、音が合ってているかだけでなく、なじんでいるかが大事なんですね。】
死ぬ思いだった吉田さん
江崎 吉田さん、いかがでした?
吉田 いやいや、もう本当に死ぬ思いでしたよ。またレーズン持ち出して申し訳ないけど、レーズンのレコーディングで僕、5キロやせたね。それが何年前かというと、もう15年以上前。
江崎 そうですね。1991年。1993年のシングルが「糸電話」で。
さだ1991年? 大正時代ですか。
江崎 違いますね。
さだ 違いますか。はい、まあそのぐらい昔。
吉田 そっか32年経ってんだ。
さだ 32年。計算早いね。お前。
江崎 吉田さんは、そのレーズンの時に歌った時、そして今回歌った時っていうのは(どうでしたか?)
吉田 グループ解散15 年でレーズンでしょ。そこから30何年経ってるから、その間が全然半端なく長いじゃない。だから、その昨年11月のコンサートもそうだったんだけど、ちゃんとレコーディングなんて40年ぐらいやってないのよ。42年ぶりぐらいかな。
さだ レーズンの時に5キロ痩せたって言ってたじゃん。今回何キロやせた?
吉田 計ってないよ。
さだ 計れよ。その後トークになるだろう。
吉田 正直、本当に大変だったっていうのが実感。まあ本人としては、皆さんに感謝感謝ですよ。
さだ 本当にね、スタッフに感謝ですよね。でも吉田、あのアルバム作る時より作り終えた時の方が太ってたと思います。
二人の曲作りはどのように
江崎 そういえば、この前、作詞をさださんがして作曲を吉田さんがしたことが今までないから、やろうかっておっしゃってたでしょ?出来たんですか?
さだ 出来たんですよ。いや、なかなか気に入ってんですよ。その曲が「花会式」(はなえしき)っていうあの花が会う式典の式なんですけど、あの奈良の薬師寺の修二会(しゅにえ)ですね。1700ぐらいの造花を飾るんですよ。梅桃桜から、十種類の花1700飾るんだから花がすごく綺麗なんです。行がすごく厳しいんですけど。見た感じがすごく柔らかいんで、みんな花会式って呼び方するんですね。・・・実はお坊さんにとっては、命がけの行なんですけど、その厳しさを歌わずに、参拝者の気持ちになって柔らかい春たけなわの3月25日から4月の1,2日ぐらいにかけての奈良をちょっと歌いたかったんですよね。
江崎 詞が最初に出来たんですか、吉田さんの曲が最初ですか。
さだ 曲ですね。
江崎 曲が最初の時って、何となくさださんが詞のイメージを伝えるんですか?それとももう曲ありき?
さだ もうおまかせ。吉田が曲を書いて譜面をばっと書いて、例えば何パターンか、こういう展開はどうだとか、こういうのもあるよとかいうのを出してくれるでしょう。で、それは僕がこう単純に並べて、あ、これいいじゃん。これで行こうかっていう感じで。あの詞を乗っけたやつを吉田に聞いてもらって違和感があったら直すっていう感じですけど、違和感なかったね。
吉田 もう丸投げですから。私が。
江崎 その「花会式」を聞いていただきます。
【この曲もトレモロが優しく入っていますね。】
江崎 作詞・さだまさしさん、作曲・吉田政美さんによる花会式を聴いていただきました。
さだ グレープの初めての共同作業でございました。
吉田 ケーキ入刀みたいなもんだよね。
江崎 この曲、私、すごく心が落ち着くなって思ったんですけれども、どういう気持ちで生み出したんですか?
吉田 うん、ふたりで共同で曲を作ったことっていうのは、かつてないわけですよ。40年ぐらい前に最初で最後のソロアルバムがあるんです。だから、それ以来曲なんか書いたことないんで、作曲モードに頭をするために、もうとても大変でした。で、もうだめだよって言ったら「何でもいいからよこせ」って言われて、五線紙に四小節でも八小節でもいいから、もう曲なんか完成してなくていいから、よこせって言われて。
さだ モチーフでいいからよこせって言ったんです。ところがね、譜面読んでみると、ちゃんとキーが整ってるんですよ。だから、こことここを合わせて、ここに書いてあるやつをここにつなげば一曲になるなって言うのは、ぱっと見て取れたんで、試しにやってみたらちゃんとしてるんですよ。だから、もうこれでいいじゃんっていう感じだったですね。で、これ最後にできたんですね。今度のアルバムの中のね。
江崎 もしかして、そのギリギリです?
さだ はい、そのギリギリです。
江崎 ギリギリを攻めてるわけじゃないんですけど。
さだ 攻めてください。吉田を。
曲作りは何をイメージ
江崎 吉田さん、曲作る時って何かをイメージするんですか?どんなことをイメージして今回生まれた?
さだ あー、それオレも聞きたいね。あの旋律っていうのはどういうイメージだったんだろうね?
吉田 イメージの前に一言言ってもいいですか?あのね。あのまあ、音楽制作をずっとやってきてる人間なんで。なんつうんだろう。いろいろ、こういうのダメとかってこうなんだろうな、うん、こういうことやっちゃいけないとかね。
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【吉田さんは曲作りでどんなことをイメージしていたのか。
さださんも、聞きたいねといいつつ、ここから少し話が脱線していきます。
吉田さんが言いかけていたのは、何をイメージするかの前に、
長いこと自分の曲作りから離れていて、
ディレクター・プロデューサーとして、これはダメ、あれもダメということが
ずっと頭の中を占めていたので、いざ自分のオリジナルを作ろうとしても、
なかなか旋律が浮かばなかったということを言おうとしていたのかなと推測しました。このあと、オリジナリティーの難しさ、
吉田さんがさださんの曲を没にした話などが続きます。】