ふきんとうだより

ふきのとう、フォーク、宮沢賢治、石川優子についてつらつら語ります

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藤井聡太と羽生善治の対談 NHKで実現 (3)

将棋の盤面は、無限の可能性を秘めた小さな宇宙のようです。一手が未来を変える瞬間を、二人の巨匠が語り合う姿に、誰もが引き込まれます。2025年11月29日放送のNHK EテレETV特集 藤井聡太羽生善治 対談 一手先の世界へ」は、そんな将棋の奥深さを、二人のトップ棋士の視点から照らし出す内容でした。放送から1週間余り、ファンの間で熱い議論を呼んでいます。第1部では出会いとNHK杯の舞台裏を、第2部では昭和の名局とメンタルを振り返りましたが、第3部はAI時代の本質に迫ります。まずは第1部と第2部のまとめを簡単に。第1部は二人の初対局から29連勝、渡辺謙さんの「無」の質問までを語り、精神性を探りました(詳細記事)。第2部は「5二銀」の解説や羽生ブーム、負けの向き合い方を深掘り(詳細記事)。さて、第3部ではAIの活用法や名手分析が光ります。では、対談のハイライトをご覧ください。。

角換わりの魅力:最強の戦法と木刀の例え

第3部は、藤井六冠の戦法から始まります。永瀬拓矢九段のコメントが印象的です。

ナレーション: 得意とする戦法は角換わり。互いに角を持ち駒にして駒組みを進める。藤井のライバルで研究仲間の永瀬拓矢九段は、角換わりこそ最強の戦法だという。

永瀬拓矢九段(コメント): 角換わり以外の将棋は木刀なんですね。私の印象は木刀で戦っている印象で、角換わりは真剣、日本刀とかそのくらい違う印象で。だから木刀だと一撃じゃ多分勝負は決まらないんです。角換わりだと一撃で決まってしまうんです。

ナレーション: ね。まさに剣豪同士の斬り合いの様な勝負。

永瀬九段が使った木刀と真剣の例えは、角換わりの鋭さを鮮やかに表現しています。この時の羽生九段と藤井六冠の表情が何とも言えず良かったです。藤井聡太六冠が一つの戦法を深掘りする理由が、AI時代の対策の速さにあるとナレーションで触れられ、納得です。2025年の藤井六冠の公式戦400勝達成は、そんな研究の賜物。初心者の方には、いきなり真剣の角換わりは難しいかもしれませんが、藤井聡太六冠、永瀬拓矢九段、伊藤匠二冠などに触発されて角換わりを好むアマチュア棋士も増えているようです。

AI研究の深み:定跡の体系化とやめどき

AI時代の大切さを問う司会の質問から、二人の本音が飛び出します。

司会: AI時代の将棋で一番大切にしていることはどういうことなんでしょうか。

藤井聡太六冠: やっぱりAIを使う以前というのは、本当に序盤の最初の方が手探り状態だったんですけど、AIを活用しながら知識を整理して体系化していくことで、自分自身の感覚としては序盤からある程度構想というか道筋を立てて、考えて読み筋を組み立てていくことができるようになったかなというふうに感じています。AIには定跡の研究というのが非常に深く進んでいまして、深い変化ですと100手とかそのくらいまで定跡ということにになっていたりというものもあります。

羽生善治九段: 角換わりでAI研究していくと結構なんか持将棋模様になって、どこでやめていいか分かんない場面とかいっぱいあるじゃないですか。研究するのはできるんだけど、どこでやめればいいのか問題って結構なんかすごい大事な課題のような気は私はしてるんですけど。

藤井六冠: はい。戦いが起きて激しい展開というのは結構お互いその候補手が少ないというか狭いところでやっぱり均衡を保つような形になるんですけど、何だかその激しい一連のやりとりが一段落したところというのが、何だか一つの定跡の区切りということになるんじゃないかなという気はしています。

羽生九段: なんか円周率の計算みたいに果てしなくできるんですけど、人生の時間は有限だからいつまでそれやるのかっていう問題はあります。

藤井六冠の体系化の話は、AIをツールとして活かす姿勢を示しています。一方、羽生九段の「やめどき」問題は、ベテランのユーモアを感じます。将棋ファンなら、このバランスが研究の鍵だと共感するでしょう。

将棋の速さと変化:アナログからデジタルへ

AIによる将棋の変化を深掘りします。

司会: AIによって将棋の何が変わったと羽生さんは感じられていますか。

羽生九段: まあやっぱり速くなったっていう実感はありますね。もちろんそれってちょっとずつ。AIができて急に速くなったわけじゃなくて、例えばネットができても速くなったし、データベースができても速くなったし、それがさらに加速されているっていう感覚はすごくあります。人間って時間をかけて理解していくもんなんで、速くなると何が起きているか分かんなくなっちゃうんですよなんか。早回しで映像を見ても何が起きているか分からないじゃないですか。

藤井六冠: そうですね。私の世代ですとそのプロになる前からやはりAIを使い始めたということになるので、それほど速くなったという実感は私の場合ですと思っていないくて、ちょうど私がプロになったという頃からやっぱりそういう大きな変化というのが起きていたのかなと感じます。

羽生九段: でもAIってすごい処理速度が速くなっているじゃないですか。その処理速度が速くなっていることが受け取る側の感覚として違うっていうことってあります?

藤井六冠: そうですね。私はそのAIをこう使い始めた頃と比べても、現在本当にソフト・ハードの両面で比較にならないほどのレベルに達していて、現在でも年々強くになっていまして。

羽生九段: それも聞きたかったんですけど。藤井さんから見てこのAI強くなったなっていう感覚って分かります?去年よりもだいぶ腕上げたなとかそういう感覚ってあります?

藤井六冠: ああ、そうですね。ある局面を検討したときに確かにこれは以前よりも説得力のあることの評価で、やっぱり読み筋が出ているかなというような感じを受けることはあるかなと思います。

羽生九段の「速くなった」実感は、アナログ時代を知る視点が貴重です。藤井六冠の世代差の話は、将棋の進化を象徴します。

4五桂の秘密:AIも驚く名手

NHK杯での一手が分析されます。

ナレーション: AIの進化とともに強さを増す藤井。この秋に行われた羽生との対決。勝負の分かれ目となったあの局面に強さの秘密があった。中盤、羽生の7七同銀。これに対する最善手にAIが予想したのは同桂成。しかし藤井は4五桂。銀を取らずにもう一枚の桂馬を跳ねたのだ。この一手を将棋ソフト開発の第一人者、杉村達也さんが最新のAIツールで分析した。鍵となるのが推定最善確率という数値だ。AIはまず有力と思う手を候補に挙げていく。当初一番手は桂馬で銀を取る手。藤井の指した4五桂が最善となる確率は9.4%にとどまった。この後AIはそれぞれを深く読み進めると、面白い変化が起きた。藤井が指した手こそ、実は勝ちにつながっていく最善の一手と示された。AIですら見つけにくい手を、藤井は指していたのだ。低いパーセントの手は読みから外しがちなんですけども読み進めてみたら良かったという事なのでやはり難易度は高いかなと思います。勝負を左右した4五桂の一手。なぜたどり着いたのか。

藤井六冠: そうですね、私としては4五桂と跳ねる手が第一感といいますか、その前の局面から操作つもりで進めていまして、私としては4五桂は自然な手かなと思って指しました。

羽生九段: 4五桂と飛ばれた時に正しく対応できればまだ難しいところもあったと思うんですけど、それは自分の感覚だとすごい違和感あるっていうか指しづらい手だったんだけどだから何か指されてなるほどなと思ったっていう。

AIでは9.4%の確率と最初は評価しましたが、藤井六冠はその局面での最善手というとらえ方ではなく、それまでの流れから最も自然な手だったという説明は説得力があります。この分析は、AIを超える人間の大局観というものを示唆しています。

体感と評価値:人間 vs AIのギャップ

評価値の話が続きます。

羽生九段: 今AIで評価値すぐ出るじゃないですか。でも対局のとき見れなくて後で見れるじゃないですか。自分の体感とAIの評価値が結構違うなって感じることってありますか?

藤井六冠: そうですね、それは感じることはあります。特に早指しの対局ですと、自分自身の感覚をある程度信頼して指していくということになるので、これで読み筋通り進めて優勢かなと思っていたら、後で調べるとそうでもなかったということもよくありますし、

羽生九段: なんか自分も見てて結構AIの評価値も揺らぐ時あるじゃないですか。上に行ったり下に行ったりだからそういう局面の時はまあAIも分からないというか悩んでる局面だからきっとすごい難しい局面なんだろうなということは悩んでくれた時は難しい局面っていう。

このギャップが将棋の醍醐味です。羽生九段の「AIも悩む」表現が親しみやすい。12月10日の順位戦で羽生九段がどう体感を活かすか、楽しみ。将棋アプリで評価値を見ながら指すと、この感覚が分かりますよ。

面白い将棋の追求:絵馬の言葉

藤井六冠の絵馬が話題に。

司会: 最近タイトル戦の際に藤井さんが絵馬に書いた言葉が面白い将棋をさせますようにだったそうなんですね。藤井さんこれはどうしてこのように書かれたんでしょうか。

藤井六冠: そうですね。面白い将棋がそのまま指したいというのを結構最近意識していることですね。大局ですと必ず相手の方が一定のやり取り、対話の末に一局が完成する感覚も強くなってきまして、そのやり取りの中で自分の研究であったり準備の中では見られなかった面白い局面、景色というのを見たい。そういう将棋を指したいなという気持ちを最近は持っています。今やっぱりこの記事の中でも多くの人がAIを活用して普段から取り組んでいるということになりますけど、全員が同じAIの意見を参考にして同じように指したとしたら、やはり見ている方にとっては全く面白くないということになってしまうので。

ファン目線の意識が素晴らしいです。AI一辺倒を避ける姿勢は、将棋の芸術性を守るもの。12月21日のNHK杯で面白い景色が見られるかも。皆さんも趣味の将棋で「面白さ」を意識してみては?

先手後手の究極:引き分けの希望

AI同士の勝率から深い議論。

羽生九段: あともう一つは今ってAI同士だと先手の方が勝率が高いとかそういう話あるじゃないですか。究極的には、今の時点でいいんですけど藤井さんそれどういうふうに思われていますかっていうのはちょっと聞いてみたいですね。例えば先手が有利なのか後手が有利なのか引き分けなのかっていうのはあると思うんですけど。

藤井六冠: お互いがそのままそんな最善を取ったものと戦い続けていくと結局最後の決着がつかないんじゃないだろうかとすごく素朴なイメージが結構持っていまして、私の感覚あるいは希望も含めてですけど引き分けなのかなと勝手に思っています。

羽生九段: あの引き分けなんじゃないかなと思ってるんですけど、なんか最近こうAIの結果が先手有利がいいと言われてちょっと少し自信が揺らいでたところだったんでちょっとその言葉を聞いてホッとしました。

藤井六冠の希望的な引き分け論が優しいです。羽生九段のホッとした反応が微笑ましい。将棋の公平性を考える良い機会です。

年齢とキャリア:40年の変化

渡辺謙さんの質問で締めくくり。

渡辺謙 将棋にとって年齢、キャリアっていうものはお二人にとってどういうふうにお感じになっておられるのかどうでしょうか。

羽生九段: そうですね。私自身ももう今年で40年ですからどういうふうに棋士として活動していくかっていうことをやっぱり問われていて、もう現役の棋士の中で多分プロになった順番からで言うと上の人も20人もいない感じなんですからまあそうですね。そういうものもやっぱり意識せざるを得ないということもありますね。

藤井六冠: 羽生九段は今年で40年というお話でしたけど想像もつきません。ただ、一局一局を大切に指していきたいと思いますし、長く活躍できたらという気持ちもあります。あと、羽生九段自身の将棋の対策、向き合い方というか、将棋観というのは、40年間の変化というのはどうなんでしょうか。

羽生九段: それはやっぱり40年前なんで全然変わったと思います。いわゆるアナログの時代からデジタルの時代に変わっていったっていうところもありますし。でも10代のときはなんか何にも分かっていなかったっていう感覚がすごいあって、いや今も分かっていないですけど、でもなんかうんいやそれはすごいあるんですよ。あの棋譜とか見ると、なんか粗だらけみたいな。いや、本当に。そこは一番変わったところです。

羽生九段の40年を振り返る言葉は感慨深いです。藤井六冠の敬意が伝わります。達人戦の敗北後も羽生九段の活躍が続くはず。将棋は生涯の道です。

第3部は、AIと人間の融合をテーマに感動的でした。シリーズは次回の第4部で完結します。お楽しみに!

将棋は、時代を超えて心を繋ぐ鏡です。この対談が、あなたの一手に新しい光を当ててくれれば幸いです。コメントで感想をお待ちしています。