ふきんとうだより

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藤井聡太と羽生善治の対談 NHKで実現 (1)

将棋の盤上で繰り広げられる静かなる戦い。その一手一手が大きな意味を持つ。 2025年11月29日、NHK Eテレで放送された「ETV特集 藤井聡太羽生善治 対談 一手先の世界へ」は、そんな将棋の深みを、将棋界の新旧トップ棋士が語り合う貴重な一夜でした。放送から間もない今、改めてその内容を振り返りながら、将棋の持つ永遠の魅力をひも解いていきます。この対談は、単なる棋士の会話ではなく、時代を超えた勝負の深みを伝える鏡です。

将棋界を代表する二人のプロフィール

まず、二人の棋士を簡単にご紹介します。藤井聡太六冠は、2002年生まれの23歳。2016年に14歳でプロデビューし、瞬く間に記録を塗り替えてきました。2025年現在、竜王、名人、王位、棋聖棋王、王将の六冠を保持。史上初の八冠達成後、永世三冠の最年少記録を更新し、通算400勝も最年少で果たしました。最近では、11月23日の第46回将棋日本シリーズ JTプロ公式戦決勝で永瀬拓矢九段に勝利し、3度目の優勝を飾っています。彼の将棋は、AIを活用した精密さと人間らしい創造性が融合した、まさに現代の象徴です。

一方、羽生善治九段は、1969年生まれの55歳。将棋界のレジェンドとして、タイトル獲得99期という圧倒的な実績を誇ります。NHK杯では11度の優勝を果たし、永世七冠の資格も持っています。2025年11月26日には、公式戦通算1600勝という史上初の偉業を達成。朝日杯将棋オープン戦の予選で連勝を重ね、55歳とは思えない活躍を見せています。羽生九段の将棋は、柔軟な発想と深い洞察力が光り、後進の道を照らす存在です。

この二人が対談する機会は稀有です。藤井六冠がデビューして以来、公式戦で18局を戦い、藤井15勝、羽生3勝という成績ですが、互いのリスペクトは計り知れません。では、対談のハイライトを、引用と私のコメントを交えながら見ていきましょう。

出会いの記憶:学生服の藤井六冠と初々しい一戦

対談は、二人の出会いから始まります。2017年、藤井六冠が四段に昇段した直後のこと。まだ学生服姿だった藤井六冠と、ベテランの羽生九段が初めて対局しました。

ナレーション: お二人が初めて対局したのは2017年のこと。藤井さんはまだ学生服でしたね。

藤井: いや、懐かしいです。

羽生: 学生服姿が非常に初々しいなという印象でした。実際に指してみて、その強さを改めて実感したというところですね。

藤井: 当時は四段になった直後で、やっぱり棋士としてどれくらいやっていけるんだろうという不安も大きかったんですけど、羽生九段との対局を通じてすごく成長の機会を得るとともに、自分自身の自信にもつながったのかなと思っています。

このやり取りに、心温まるものを感じます。藤井六冠の言葉からは、若き日の不安と、それを乗り越えた感謝が伝わってきます。一方、羽生九段の「初々しい」という表現は、ベテランならではの優しい眼差しを表しています。将棋は個人競技ですが、こうした師弟のような交流が、界全体を豊かにしているのです。2025年の今、藤井六冠が八冠の頂点に立つ姿を思うと、この出会いがどれほど大きな意味を持っていたか、感慨深いですね。

29連勝の裏側:怖いもの知らずの集中力

話題は、藤井六冠のデビュー戦での驚異的な29連勝へ。羽生九段がその心境を尋ねると、藤井六冠は当時の「怖いもの知らず」を振り返ります。

羽生: 藤井さんの場合は、その後すぐに29連勝してデビューしたわけですが、29連勝ってどんな気持ちでしたか?

藤井: そうですね。私も今振り返ってみると、なぜあんなに連勝できたのか、正直不思議というか、いろんな気持ちがするんですけど。当時は本当に「怖いもの知らず」というか、そういう気持ちもあって、自然と盤面に没入して集中して指せていたのかなというふうに思います。

このエピソードは、将棋の醍醐味を象徴しています。若さゆえの純粋な集中力が、歴史的な連勝を生んだのです。羽生九段も、自身のキャリアで数々の連勝を経験していますが、藤井六冠の言葉に共感を覚える様子が、画面越しに伝わってきます。初心者の皆さんも、日常の課題に挑む際、この「没入」の感覚を試してみてはいかがでしょうか? きっと、意外な成果が待っているはずです。

対戦の難しさ:終盤の鋭い切れ味

続いて、羽生九段から見た藤井六冠の強みについて。対戦の難しさを問うと、羽生九段は終盤の切れ味を挙げます。

司会: 羽生さんから見て、藤井さんと戦うことの難しさはどんなところにありますか?

羽生: そうですね。終盤の切れ味の鋭さはもちろんですが、なかなか弱点を見出せないというところは、対戦していてすごく感じるところですね。

ここで語られる「弱点を見出せない」という言葉は、藤井六冠の将棋がどれほど完成度が高いかを物語っています。羽生九段の経験豊富な目から見ても、隙が少ないのです。2025年の対戦成績(藤井15勝、羽生3勝)を踏まえると、この評価は的を射ています。将棋ファンなら、この部分を読み返すだけで、興奮が蘇るでしょう。私としては、こうしたベテランの分析が、後進棋士の成長を促す好例だと思います。

舞台裏の緊張:NHK杯での激闘

対談では、2025年秋のNHK杯公式戦の舞台裏も密着取材されています。1年半ぶりの対局で、藤井六冠が中盤の4五桂で逆転勝利を収めた一局です。

ナレーション: この秋、藤井と羽生が激突したNHK杯公式戦では、1年半ぶりの対局となりました。…最後は108手で藤井NHK杯選手権者の勝利となりました。対局後の感想戦では、笑顔で意見を交わすお二人でした。

このシーンの緊張感は、将棋の真髄です。序盤で羽生九段が有利だった局面を、藤井六冠の予想外の一手がひっくり返す様子は、視聴者を引き込みます。対局後の笑顔が印象的で、勝負を超えた絆を感じさせます。NHK杯が75周年を迎えた今年、この一局は将棋史に残る名勝負として語り継がれるでしょう。

渡辺謙の質問:盤上での「無」の境地

特別ゲストとして、俳優の渡辺謙さんが登場。対局中の感覚について質問を投げかけます。

渡辺謙 例えば、盤上に駒を並べて、相手が目の前にいる。その時の感覚ってどんなものなんですか? 全く無なのか、それとも相手に合わせる何か、対局のイメージみたいなものを持っていらっしゃるのか。

羽生: 一番最初に初めて対戦したときは、いわゆる「無」のところから始まるわけなんですけど…同じ人と対戦しているけれども、また新たな気持ちで臨んでいるというような感覚ですね。

藤井: 相手の方の存在感をどの程度感じるかというのも、実は自分自身のコンディションの物差しの一つでもあって。…自分の状態が良いときは、あまりそういう感覚がなく、スッと盤面に入っていけるような感じがします。

渡辺さんの質問が、対談に新たな深みを加えています。羽生九段の「一期一会」のような心構えと、藤井六冠のコンディション管理の話は、将棋の精神性を浮き彫りにします。演技の世界と共通する「無」の境地は、幅広い読者の共感を呼ぶでしょう。この部分は、特にメンタルヘルスに関心のある方にオススメです。

この対談は、3時間近くに及び、AIの進化や将棋の未来についても触れられていますが、今回はここまで。続いて、AIとの関係や後進への想いを詳しくお届けします。シリーズ第2弾として、近々アップ予定です。お楽しみに!

将棋は、奥の深いゲームで、心を鍛える道場です。この対談を通じて、二人の言葉があなたの日常に一手を加えてくれることを願っています。コメントで、あなたの将棋エピソードをシェアしてくださいね。