貴族の復活劇!佐藤天彦九段、10連敗脱出の快勝
将棋界の「貴族」として知られる佐藤天彦九段が、長いトンネルを抜け出す会心の一局を披露しました。2025年8月2日に行われた「第46回将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」福岡大会で、菅井竜也八段と対戦。見事な勝利を収め、今年4月から続いていた公式戦の連敗を「10」で止めました。
多くのファンが待ち望んだこの勝利。本記事では、激戦となった対局内容を振り返りながら、佐藤九段復活の軌跡を追います。
福岡市で2日指された第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦1回戦第4局、佐藤天彦九段対菅井竜也八段の一戦は、佐藤天彦九段が勝ちました
— 中日新聞 東京新聞 将棋【公式】 (@chunichishogi) August 2, 2025
次戦は伊藤匠叡王です
写真は将棋日本シリーズ総合事務局提供 pic.twitter.com/kxuG8D2HZJ
第46回JTプロ公式戦 激闘の譜
対局者とここまでの状況
先手は、振り飛車党のエース・菅井竜也八段。
10連敗中の佐藤天彦九段は後手です。
佐藤九段は、名人3期の実績を誇るトップ棋士ですが、今期は、深刻な不振に苦しんでいます。一方の菅井八段も、実力者でありながら最近は勝ち星に恵まれない状況。両者にとって、この一戦は浮上のきっかけを掴むための重要な対局となりました。
序盤から激しい乱戦模様に
菅井八段の初手▲7八飛で、戦型は得意の三間飛車に進みます。
対する佐藤九段は、角道を開けたまま急戦を挑む姿勢を見せ、序盤から角交換が行われる激しい展開となりました。
佐藤九段が自陣に角を打ち込んだのに対し、菅井八段も角を成り捨てて馬を作り、盤上は一気にヒートアップ。
わずか10数手で、互いの駒がぶつかり合う乱戦模様となり、解説からも「とんでもない将棋になった」との声が上がるほど、スリリングな幕開けとなりました。
勝負を分けた中盤の攻防
佐藤九段の冷静沈着な一手
激しい攻め合いの中、佐藤九段の冷静さが光りました。
菅井八段が▲8二飛と攻めの拠点を作った局面。
ここで佐藤九段が指した24手目△4一玉が、本局の勝敗を左右する重要な一手でした。
一見すると地味な手ですが、自玉を安全な場所に移動させることで、相手の攻めの狙いを外し、後の反撃に備える意味があります。
攻め一辺倒になりがちな乱戦で、自玉の安全を確保するこの冷静な判断が、後の優勢につながっていきました。
対する菅井八段は▲6八飛と受けに回りますが、佐藤九段は着実に攻めを継続。
守りの金を力強く上がった△5三金左など、力強い指し回しで徐々にリードを広げていきました。
終盤の決め手となった華麗な一手
優勢を築いた佐藤九段の指し手は、終盤に入ってますます冴えわたります。
圧巻だったのは、94手目に放たれた△9四角。
これが盤面を制圧する素晴らしい一手で、菅井陣に痛烈に響きました。
この角打ちによって、菅井竜の動きを封じると同時に、先手玉への寄せを加速させます。菅井八段も最後まで粘りを見せますが、佐藤九段は的確に対応。
最後は△1八飛成から鮮やかに寄せきり、112手で菅井八段が投了。
佐藤九段が苦しみ抜いた末に、大きな一勝を手にしました。
苦悩からの脱出、そして次なる戦いへ
この勝利で、佐藤九段は10連敗を脱出。
局後のインタビューでは、「久しぶりに勝ててほっとしています」と安堵の表情を見せました。キャリアワーストの連敗という苦しい状況を乗り越えたこの一勝は、今後の戦いに向けて大きな弾みとなることでしょう。
次戦は9月13日、若き王者・伊藤匠叡王との対局が予定されています。
完全復活を印象付けることができるか、将棋ファンからの期待が高まります。
まとめ
佐藤天彦九段の復活を告げる、見事な一局でした。
序盤の激しい展開から、中盤の冷静な判断、そして終盤の切れ味鋭い寄せと、佐藤九段の魅力が存分に発揮された内容だったと言えるでしょう。
連敗という長いトンネルを抜けた貴公子の次なる一手は、どこへ向かうのか。
今後の活躍から目が離せません。
指し手はアユムさんの動画を参考にしています。