ふきんとうだより

ふきのとう、フォーク、宮沢賢治、石川優子についてつらつら語ります

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草野心平 「宮沢賢治覚書」 ①

宮沢賢治覚書」は、草野心平宮沢賢治とその作品について書いたエッセイ集です。1951年に初版が出版され、それ以来、賢治研究の必読書となっています。
 

 

著者・草野心平のプロフィール

 
草野心平(1903-1988)は、日本の詩人。福島県出身。慶應義塾普通部を中退し、中国の広東大学に留学。1928年に『第百階級』を刊行し、日本近代詩の第一人者として評価されました。戦後、雑誌『歴程』を主宰し、多くの若い詩人を育てました。また、書や画など、多彩な創作活動でも知られています。代表作に『呼子と口笛』『夕焼け』『冬眠』など。
 

本書は宮沢賢治をよく知るためには必読

 
このエッセイ集は、心平が21歳のときに初めて賢治の「春と修羅」を読んだときの思い出から始まります。心平は賢治の詩の力と独創性に驚き、すぐに賢治の熱心なファンになりました。
その後、心平は賢治と個人的に知り合いになり、生涯にわたって親交を深めました。このエッセイ集には、心平が賢治と過ごした時間、そして賢治の考えや作品について語った話が収められています。
心平の賢治に対する理解は深く、彼の分析は鋭く洞察に満ちています。このエッセイ集は、賢治の人間性と文学への深い理解を示す貴重な資料です。
賢治のファンなら必読のエッセイ集です。心平の賢治への愛情と理解が伝わってくる、読み応えのある文章です。
 

春と修羅」について

 
心平は「春と修羅」を読み終えたあと、まず感じたこととして、次のように書いています。
 

春と修羅」を通読して先ず第一に感ずることは、その透明な色彩と音楽である。語彙の豊富である。その底にしずかで力強い「宮沢賢治」の全貌が横たわっている

 

確かに、「春と修羅」は一読しただけではわからない難解な言葉が使われています。そういう意味で、賢治は豊富な語彙を駆使しています。しかし、色の描写などは、凝っておらず「透明な色彩」と言えます。音楽が確かに息づいています。オノマトペによる音の描写のみならず、音を連想させる表現が自然にちりばめられています。
 
のぼせるくらゐだこの鳥の声
 
(その音がぼつとひくくなる
 
うしろになってしまつたのだ
 
あるいはちゆういのりずむのため
 
両方ともだ とりのこゑ)   

 

小岩井農場 パート三の一節
 
このように、心平のエッセイ自体もなかなか高度な内容なのですが、賢治の難解な詩の特徴を見事に切り取っていると言えるでしょう。